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2009/10/22 (木) カテゴリー: 未分類
![]() | Princess Frontier (2008/03/28) Windows Vista 商品詳細を見る |
ポルカ村さいこう~!! と思わせるゲーム。いやもう住みたくなってくるほどです。素晴らしいのなんの。
まったくの余所者で、しかも悪評が付きまとっていた主人公に対する村人の評価は、はじめ最悪でした。主人公のリュウくんも、馴染もうと頑張るけどその最悪な視線にくじけ、すべてを投げ出してしまいそうになったこともありました。しかしロコナの信頼とか、レキの叱咤とか、あるいはジイさんとの気楽なやりとりとかジンとの息を抜ける時間があって、それでもくじけないで戦おうと頑張り続けた結果、今の彼があるわけですね。
リュウ 「この村に来て、そりゃ最初はツラい目にも遭ったよ」
リュウ 「でも……乗り越えた。みんなが助けてくれたから、逃げ出さずに頑張れた」
小さな村ですから、「全員が家族」みたいに付き合いが深くて、それは優しさだったり楽しさだったりをもたらしてくれるわけですが、そのような関係に誰でも簡単になれるわけではありません。努力を重ね信頼を得た結果として、そこに至れるのです。……が。それだって簡単にできるわけではない。「努力」だって、簡単にはできない――簡単じゃないから「努力」と言えるわけですけど。一人だけじゃ押しつぶされてしまうかもしれない。そこを、「誰か」の存在が支えてくれていたわけです。その「誰か」である彼や彼女自身が、別にリュウを支えようとしてそうしていたわけでなくても。
リュウ 「アルエのお母さんな」
リュウ 「たぶん……一人じゃ辛かったはずだ。アルエがいたから強かったんだ」
リュウ 「仲間ってのは、力を貸してくれる存在でもあるけど――」
リュウ 「逆に、力を増してくれる存在でもあるはずだ、と思う」
仲間と呼べるような誰かがいるということは、単純にそれに頼るだけではなく、自分自身が強くなれるし、また、仲間自身もそれで強くなれている。この辺はひとつの根幹でしょう。個別シナリオにおいて、その全てで、彼女たちが直面するクライマックスの問題において、大なり小なり「仲間」の力に頼ったり、「仲間」に助けられたりするけれど。それは単純に「依存」しているわけでも、「救助」されているわけでもない。彼らがいることで、仲間自身も強くなれているのだから。たとえばアルエノーマルEDなんかが顕著でしたが、仲間までも壮大に巻き込むそれは、決して彼らを無碍にしているわけでもなく、彼らの人生を台無しにしているわけでもない。そのこと自体で――アルエとリュウという仲間が窮地に陥っていて、それを助ける・助けられるということ自体で――「仲間」である彼ら自身が、強くなれている。
アロンゾ 「自分だけを責めるな、と言っているんだ」
アロンゾ 「むしろ、自分が何でも背負えると思うな」
アロンゾ 「全能の人間がいるわけないだろう」
ホメロ 「……人はのう、誰にも迷惑をかけずに生きたりは出来んのじゃ」
ホメロ 「初めは親、そして友人、いずれは妻、最後には子供や孫にも迷惑をかけて一生を送る」
そういう関係が、「仲間」であり、そしてたとえばポルカ村の村人たちのような、血縁ではない「家族」のような関係である。その極端な逆が、アルエが自分のことを男だと思い込んだ(思い込みたかった)ことだったりします。自分が男なら守れたと思い込まずにいられなかったのは、誰かに頼ることが出来なかったから、ということもあるのではないでしょうか。宮中での孤立具合を考えると、頼れる誰かは当時いなかった。ならば、自分で何とかしなくてはならない――”何とかするだけの力(根拠)が自分になくてはならない”(それはもちろん、”この時は”守れなかったのだから、”今は”封印されてなければならない=魔法で力(男だということ)が封じられている)。たったひとりで、少なくともそのことについては背負い込まなければならないと思っていたからこそ、アルエは自身を本当は男だと思わなくてはならなかった。たったひとりでも生きていけるよう、守っていけるよう。
だからこそ、リュウが様々な形で・様々な人を守って、アルエが彼のことを「頼れる」と思った瞬間に、「男に戻りたい」という観念も消えるのです。自分ひとりで背負い込まなくてもいい。助けてくれる人がいる、守ってくる人がいる、頼れる人がいる。だから――自分が、それを出来る存在(その責任を負うもの)にならなくても大丈夫だ、と。この問題は他のヒロインにもある程度通底しています。ひとりで向かい合ってきた問題、ひとりで向かい合うものだと思っていた問題、ひとりで向かい合うことになるだろう問題(順にレキ・ミント・ロコナ)……彼女たちを取り巻いた”いた”のはそれだけど、けれど実際に、ひとりっきりで向かい合う必要なんてどこにもない。全てを自分ひとりで背負い込む必要なんてどこにもない。
「仲間」がいるということ、それは自分自身の助けにもなり、力にもなるけれど、自分を頼ってくれる誰かがいるということ・あるいは、自分が助けたい(手助けしたい)と思う誰かがいるということもまた、自分自身の力になる。一方通行の助けではなく、双方向に、お互いが伸びていくのです。それほどの関係が、「彼ら・彼女ら」の関係であり、また「家族のような」とも喩えられた「ポルカ村」の人々の関係でもある。
■選択肢に関するメモ(プリフロあんま関係ない)
やはり「選択肢」というシステムは面白い。考えがいがある。まあさほど珍しいものではないんですけど、『Princess Frontier』だと、共通ルート終盤の「パイ作りの手伝い」の選択肢が面白かったですね。ヒロインたちが村のイベントでパイを作ることになり、リュウは彼女たちの中から誰か一人にだけお返しのプレゼントをすることができて、そしてそれを「誰にあげるか」という選択肢がある。その後のパイ作りイベント時に、主人公が手伝う女の子を「くじ引きで」決めることになって、その時に、先の「誰にあげるか」の選択肢で選んだヒロインが、くじの結果で出てくるようになる。たとえば、「ロコナにプレゼントをあげる」を選んだら「くじの結果がロコナ」、「アルエにプレゼントをあげる」を選んだら「くじの結果がアルエ」といった具合ですね。
ここにおいては、「誰にプレゼントをあげるか」しか選んでないのに、その選択が「くじの結果」に繋がっている。選択肢が、主人公の行動ではなく(だけではなく)、運命的なものに干渉している。こういった選択肢効果はエロゲで時たまありますけど、なかなか面白いですね。現実では絶対に起こりえない。自分が誰にプレゼントをあげるかを選べても、その結果でくじの内容が変わる(くじの内容をコントロールできる)なんてことは絶対に起こりえない。しかしここでは起こっている。となると、ここでは、主人公が誰にプレゼントを渡すかという行動面だけではなく、くじの結果が何になるかという運命面についても選択していることになる。
「選択肢」というシステムは、プレイヤーを否が応でも「決定する主体」にならさせる。これは何も「主人公の行動」”だけ”を選択するわけではない。主人公の行動=力が及ばない範囲までも「選択肢」は及ぶ――そのレベルにまで、プレイヤーは「決定する主体」にならされる。もちろんここでいう「決定」というのは、全てを自由に決定できるわけではなく、本当は殆ど何も決定できないのに”まやかし”で自分が決定できているかのように思わさせられるシステムでしかないのだけれど。
http://nasutoko.blog83.fc2.com/blog-entry-46.html
その辺は前に書いたこと(↑)ですが、このような「運命の決定」を絡めると面白いですね。主人公の行動だけでなく、ある種「神のように」運命を動かすことができる。……もちろん、上に記したように、実際は殆ど何も出来ていない「まやかし」なんですけど。
プレイヤーはまやかしの主人公でありまやかしの神である――”主体としてだけそうである”といったカタチで解釈できうるかもしれません。主人公の運命を自由に投げ込むことはできないけれど、たとえば4つの箱のどれに投げるか(=どのルートに進むか)程度に彼の運命を投げることはできる……ように見えて、実際は彼の運命を「見る」だけに留まるのかもしれないけれど。しかし「ように見える」というのがここでは大事で、むしろそれが全てである。ときメモ系やガンパレ系と比べてみればコントラストが明白だけど、殆ど全てのビジュアルノベルの選択肢というのは、やっぱりそうなんでしょう。「選択」という意味では擬制なんですけど、「主体化」という意味では一定の効果を発揮している。主人公でもあり同時に超越的な何かでもある――最終的には、運命を投げることができるのだから、”投げれる彼”と言えるのかもしれない。たとえば、”全ての彼の行く末を既に(未経験でも)内包している彼”とでも云ったところでしょうか。プレイヤーは彼が辿る運命の(ここにある)全てを知ることができる――もちろん、作中の彼はその全てを知ることはできない。ならばプレイヤーはアポリアな「全ての彼」という立ち位置である(あるいはそれを分有する)と考えることは可能なんじゃないだろうか? ”決定”が可能なことであり同時に自動的なことでもあるこの狭間における主体は(そして時間軸も無いこの世界認識では)、その行き着くところ全てを既にして内包している主体でもあるんじゃないだろうか。
とかなんとか。これもまた続くというか、そのうち考えます――詰めます。
(記事編集) http://nasutoko.blog83.fc2.com/blog-entry-47.html
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