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2009/08/04 (火) カテゴリー: 未分類
花と乙女に祝福を 初回版
(2009/05/29)
Windows
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『花と乙女に祝福を』が素晴らしすぎて死んでる今日この頃です。てゆうかナンだこれ、素晴らしすぎるマジで!
私の中で2009年ベストエロゲはこないだまで『俺つば』でどうあっても決定だろうと思ってたんですが、そこに一気に対抗馬が出てきたくらいの勢いです、自分の中じゃ。テイストは『俺つば』と『花おと』は全く異なりますけど。
以下ちょいとネタバレ。祈と眞弥子と千鶴さんシナリオクリア済み。
やはり「仮想化しきれない残余」というのを以前も記したのですが、そうですね。
開始直後はともかく、ゲーム内で2・3日経つと、彰はもう完全に近いくらいに「女の子」もとい「晶子」になっている。
「んー……彰ぁ? 違うよ、私は晶子だよぉ」
うぅっ、なんか可愛い! やっぱりダメだ。私こういう子に弱いのよ。
もっとお話したくなっちゃう。
上は都さんに「彰さん」と呼びかけられた時(しかも晶子=彰が寝ている時に!)の反応。寝ている、全く無防備、もはや無意識の状況でも、しっかりと彰は「彰」じゃなくて、「晶子」になっている。
下は祈ちゃんとはじめて会って、晶子が彼女のことをなんか気に入っちゃった時の反応。この反応は「男ではない」ですよね。この一文だけだと分かりづらいかもですが、ゲーム内のテキストを追っていただくとよく分かる。まるで「男性的視点・視線」で見ていない。それはこのシーンに限らず、(ルピナス潜入当初と、各シナリオ後半部を除けば)殆どずっとと云って良いくらいに、晶子=彰に「男性的視点・視線」というものは存在しません。序盤と終盤を除けば、殆どが男性的視線・視点が排除された―――というよりむしろ、「女性的視点・視線」のようなもので埋め尽くされている(正確には、それはやはり女性的よりも少しズレているかもしれない、「晶子的視点・視線」といった方がいいかもしれない)。着替えを見てどうとか、下着を見てどうとか、スキンシップしちゃってどうとか、うっかり一緒にお風呂入りそうになってどうとか、そういう、普通の女装主人公モノでありそうなイベント・シチュエーションが殆どないし、あっても女性的視点・視線で埋め尽くされている。
つまり男性的な視点・視線を殆ど意識させていない。言い換えると、プレイヤーに晶子は「男だ」ということを(序盤・終盤・一部イベント除けば)殆ど意識させていない。自身が「男である」ということを意識させるような視線の配しが、殆ど存在していないワケです。
とはいえ、それでもやはり、晶子=彰は「男」なワケです。どんなに擬態しても、どんなに擬装しても、それはどうしようもなく拭い去れない。その起源は消えることはない。
拭いきれない起源というのはまだ他にもある。
そもそも「妹の代わり」であるということ、そして動機が「妹のため」だということ。
さらに自分が本当の姿ではないという事、本当の自分自身でルピナスの彼女達に接しているワケではないということ、つまり作中でも幾度か彼自身が自己言及していましたね、「騙している」という観念。
そして最後、妹の代わり、それも緊急措置的に一時的なものなのだから当然にある、この生活の終わり。(殆どの人に)お別れを言わず去っていかなくてはならないという幕。
どれだけ彰が「晶子になろうとも」、やはり、どうしたって、”本当に晶子じゃない”以上、それらの要素はどうしても拭いきれない。消し去れない。そもそもの起源を覆すことはできない。何もかもを仮想化させて彰は「晶子」になっても、消え去らない起源という残余がそこに残り続ける。
そして、それに追いつかれるし、それに向き合う。
肉体・性―――男であるということが、どうしようもなく拭いきれない残余としてあって、それが表面化してくるし、妹の為・代わりという事情も、この事態を動かしていく。
これがこのゲームの素晴らしさの一つですね。この世界―――ルピナスに晶子として居るという「楽園」を、ただ楽園のまま逃避的に受け入れるのではなく、しっかりと、そこにある問題に目を向けている。そこにある、というより、”何ものにもある”と言い換えられましょうか。起源という問題、仮想化しきれない残余という問題は必ずある。どんなものにだって、はじまりははじまりとして永遠に残り、それを(たとえ目に見えない残余だろうとも)捕らえ続ける。
そのことを誤魔化さないところが、一つの良さではないでしょうか。
勿論それ以前に、「女になって」……というか「晶子になって」、この好かれたり憎まれたり噂されたり付き纏られたり怪しまれたりと至れり尽くせり何でもアリますの世界で遊ばせてくれるという楽しさもあるし、単純にキャラクターもみんな魅力的ならテキストもいい。あ、あの「メインとモブ」との絵の落差が、意味合い的には”まんま”なのでしょうが、ちょっと驚きに面白かったです。
またシナリオも「偽物の薔薇」「偽物の青い薔薇」など、晶子=彰に対し微妙に隠喩的だったり、私がクリアしたのはまだ三つ(祈・眞弥子・千鶴)のシナリオだけですけど、その全てに大なり小なり「相手の家」「相手の父親」が絡むのも特徴的でした。父権的障害、あるいは父的権力が目の前に立ったり匂わされたりしている。
実は本物の晶子も、彰=晶子にとっては(この女装状態の彰にとってはであって、普段の彰にとってではあらず)ある種父権的な支配力を持っています。こちらは彰でもあるけれど晶子でもある――兄でもあるけど女性でもあるという状態で、彼女はその彰の状態をどうにでも出来る人であるし、そこからの成果を(ある程度)受け取る人でもある。だいたいしょっちゅう叱られまくりですしね。本物の晶子は彰=晶子にとってファリックマザー的であると言えそうです。祈や眞弥子ちゃんシナリオでは、道を指し示したり、彰のことを自分でも意外なほどに認めてしまったり(「兄さんが成長して遠くに行っちゃった感」を彼女は感じていましたね)、千鶴シナリオではラストに兄となって兄を(彰=晶子を)助けに来たり。
この辺の関係性、<父>を巡るお話もまた、重要かもしれません、ということで続く。
FC2スレッドテーマ : エロゲー (ジャンル : ゲーム)
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